遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

デザイナー(と編集者)のための日本語力強化図書・選。

僕が属するエディトリアルデザイン/ブックデザインの仕事は、日本語を扱う仕事だと言っても過言ではありません。
ところがどっこい、デザインの世界に入ってくる人たちは、どうも国語力があやしい方が多かったりするんですね。グラフィックをやるつもりで来てるんだから、まあ分からんでもないですけど。
でもねぇ、普通、国語辞典の一冊くらい手元に置いておくもんでしょ。これは社会人としての常識ですよ。
……ま、そんなわけで、デザイナーとか編集者とか、あるいはWeb・映像制作者のために、手元に置いておくとよい日本語関係本をいくつか紹介しちゃいます。

総合

社会人のための国語百科 カラー版

社会人のための国語百科 カラー版

大修館書店の『社会人のための国語百科』。国語の参考書・大人版です。学生向けの内容を再編集したものだと思うんですけど、百科の名に恥じず、情報量がはんぱない。カラー写真・図版をふんだんに使っているにもかかわらず、値段が異常に安い。普通にこの内容で作ったら定価は1万近くなるんじゃないのかしら? 老舗出版社のリソースを大放出した一冊ですね。とりあえずこれは買っとけ。眺めるだけでも楽しいから。絵のほうの資料にもなりますよ。

国語辞典・漢和辞典

今、自分の手元に置いてあるのは岩波の『岩波 国語辞典』と大修館書店『新版 漢語林』です。
漢和辞典は、ここ20年くらいでその内容や役割が微妙に変わっていますね。「漢和辞典」ではなくて「漢字辞典」が必要とされるようになってきた、とか。ちなみに、90年代以前の漢和辞典には略字形が載ってないものも多く、略字対正字*1の対応が分からなくて困ったりします。ちょっと古めのを使ってる人は要注意かな。
さて、僕もそろそろユニコード表記付きの漢字辞典がほしいところ。
旺文社の『漢字典』あたりがいいのかなー。←おすすめあったら教えてね。
追記:三省堂の『漢辞海』がよいとの情報を得ました。
「表外漢字字体表」「新JIS漢字」「新人名漢字」に完全対応。JISコード、ユニコードを明示、とのことなので、間違いなさそうです。

全訳 漢辞海

全訳 漢辞海

表記と用語

共同通信社『記者ハンドブック』、朝日新聞社朝日新聞の用字の手引』なんてのがありますが、新聞社の表記ルールはかなり独特なのです。ニュース記事を扱うのですから、個性がおもてに出ては困るわけです。文章表現を画一化する意味合いが強い本ですので*2、企業広報やパンフレットを作ってる方はともかく、一般の人や書籍/雑誌の人は、これらは参考にしないほうが良いです。

日本語の正しい表記と用語の辞典 第二版

日本語の正しい表記と用語の辞典 第二版

手元には講談社の『日本語の正しい表記と用語の辞典 第二版』がありますが、まあこちらも参考程度に*3。大衆文学から学術書まで扱う講談社ですから、前者に比べれば、かなり緩い運用を目指して書かれています。日本エディタースクールの『校正必携』。これは普通に必携でしょう。でもそろそろ新しい版を出してほしいですね。

その他おすすめ読みもの

日本語大博物館―悪魔の文字と闘った人々 (ちくま学芸文庫) 日本の漢字 (岩波新書) 文字の骨組み―字体/甲骨文から常用漢字まで パソコンは日本語をどう変えたか―日本語処理の技術史 (ブルーバックス)
『日本語大博物館』『日本の漢字』『文字の骨組み』『パソコンは日本語をどう変えたか』等々、詳細をお伝えする気力がないのですが、このあたりは読み物として大変おすすめです。

*1:いわゆる康煕字典体と83JISの字形差のこと。詳しい説明は略。

*2:たとえば、「憶える」という表記を否定していたりします。

*3:「ぶら下げ組みをしない」とか書いてあるのは講談社ルールだからで、他意はないでしょう。