遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

『ファウスト Vol.2』書体話。

ファウスト Vol.2』はInDesign CSで制作されたとのことです。いやー、早いですね〜。
それはさておき。
まず、前号で予告されていた作家専用フォント企画ですが、字游工房*1製作の「舞城王太郎×Thom Jones専用書体」として実現。
発売前に配信された「メールマガジンファウスト第13号」には、制作に携わった、字游工房のタイプフェイスデザイナー、岡澤慶秀氏のインタビューが掲載されていました(バックナンバーはこちら。http://mm.kodansha.net/backnumber/faust/13.html)。実際に、舞城訳『コールド・スナップ』の初稿を読んでから制作にかかったようですよ。
ちなみに、この書体は、いわゆる「明朝体」ではなく「宋朝体*2。漢字部分は、「DF新宋体」を使用しているようです。そういえば、DF新宋体のかなデザインは字游工房製なのでした*3
巻頭で目を引く、乙一の『F先生のポケット』に使われているのは、「丸明オールド」という書体。広告や装幀でちょくちょく見かけていましたが、本文に使うとこうなるのかぁ……。かなり意表を突いたセレクトですが、作品によく似合っています。
さて、せっかくの機会ですから(^^)、「ファウスト」で、フォントに興味を持たれた方*4のために、誌面に明記されていないフォント名をあげてみましょう。

  1. 「紅葉狩」→白舟極太草書
  2. 「メタリアル・フィクション」「ぐるぐる人生相談」→イワタ新聞明朝体
  3. 「成功学キャラ教授」→クレー
  4. 「Hな人々」→ハミング
  5. YU-NO」「巻末独談会」→墨東Rod
  6. 「ヤバ井でSHOW」→小塚ゴシック
  7. 「実録!人生劇場」→和字 Revision 9 はなぶさ
  8. 「編集後記」→和字 Revision 9 かもめ

てなところ。
今、パソコンで使える日本語フォントは、相当な数が発売されています。そのなかから、自分のキャラに合わせた「自分用フォント」を選定してみるのも面白いんじゃないでしょうか*5
参考サイト:
和文フォント大図鑑(http://ohkadesign.cool.ne.jp/wabunfont/
字游工房http://www.jiyu-kobo.co.jp/

*1:フォント制作会社。京極夏彦氏も使用している「ヒラギノ明朝体」「游明朝体」は、ここで作られたのです。

*2:普通、本文には使われることはない。そういえば、『組版原論』だったか、「本文には明朝ばかりでなく宋朝体も使えるのではないか」というふうな記述があったような記憶が。

*3:発売はダイナフォント(http://www.dynacw.co.jp/dynafont/index.html)より。単品なら1100円程で購入できますので、舞城ファンなら購入してみてもいいかもです。元のかなもいい書体ですよ。

*4:百人ぐらいはいます?

*5:付け加えますと、「ファウスト」の書体選択は、単なる遊びではなく、かなり慎重に行われています(ちょっと変なとこもありますが)。「書体をたくさん使うとダサくなる」これはデザインの世界では常識です。安易にマネしようとすると、素人くさい誌面ができあがること、うけあいです。間違っても、応募原稿に変な書体を使ったりしないようにね(これは蛇足か)。