遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

佐々木正人『レイアウトの法則』(ISBN:4393360281)を読了。
生態心理学の考え方では、動物は、周囲の資源を利用するため環境との関係を調整する(レイアウトする)能力を持ちます。そのための情報はあらかじめ環境に埋め込まれており、その偏在する資源をアフォーダンスと呼びます。
言うまでもなく、我々が見ている周囲の環境は、図面に描くルネサンス遠近法とは違います。それは、3DCGにテクスチャを貼りライティングをシミュレートすれば解消するわけでもない。絶対に何かが違うという感覚が残ります。では、違う部分は単なるノイズなのでしょうか。
これまでの科学的考え方は、ノイズを除去することで真理への到達を目指していたようなところがありますね。あるいは単純な数式によって。そこでは「誤差」が一方的に切り捨てられます。けれども、僕らは環境全体を分割不可能な複合的なレイアウトとして知覚しているわけですね。いや、分割はできるんだけれど、分割すればレイアウトは失われる。それではリアルな知覚は説明できないわけです。
もちろん、現在のアフォーダンス理論ですべてが説明できるわけはないのですが……。
デザインの鈴木一誌さんもアフォーダンスに注目してたんですね。ちなみに本文書体は筑紫明朝。A見出ミンと共に、印象に残る版面を作っています。
帯の「レイアウトから生きる力が沸いてくる」は、なかなかの名コピーかも。