遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

「ハウルの動く城」はマニエリスムか?

昨日見てきました「ハウルの動く城」。
面白かったんだけど、わかりませんでした。
僕たちは試されているのかな?
「マルホランドドライブ」よろしく謎解きをしなくちゃならないのか。どうかすると裏の意味を読み取れるのかと、一晩考えたけど、「隠された意味がありますよ」というメタメッセージが、まず読み取れない。
手がかりはいくらでもちりばめられているように見えるのだが。
場面1つ1つは美しく、つながりもきれい。物語も(判りづらいけど)ちゃんとある。なのに、全体として何を描いた作品だったのか判然としない。
軽やかなワルツに乗ってストーリーは流れ、何も引っかかるところはないようにも思われるが、とても不安定で不可解なところだらけでもある。
絵は極度に洗練され、故に新しいものを見ている気はしない。それは美術史でいうところのマニエリスムを思わせる。つまり完成された型をさらに洗練させることで、自然を超えた技巧に走っている。そこに寓意が読み取れそうなほどに。寓意といえば「動く城」はそのまま、ボッシュの「聖アントニウスの誘惑」*1などを思い起こさせる。

誘惑とは、疑問のうちに成立するものである。疑問の噴出こそ悪魔の誘惑である。
澁澤龍彦『悪魔の中世』

もう一度見ないといけないかなと思ったときにはすでに罠にかかっているような気もするが。
とにかく不安定な転換期である現在を反映してることは間違いない。今はまだ、この映画の評価は下せそうにない。

*1:ボッシュマニエリスムの画家じゃないけど。