遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

新作フォント「N3ゴシック(仮称)」制作中です。

どうもです。
「フォントはじめました」とか言い始めてもうじき4年になる西岡です。当初は、ネタというかお遊びでフォントを作ってみるよという感じで始めたんですけれども、どうもそれではおさまらず、ちょっと本気を出してみることにしました。
今回の書体はゴシック体の仮名です。
これまではほとんど誰にも見せることもなくコツコツと作ってきました。今後は少し情報を出していくつもりです。ちなみに、今のところ何のアテもありません。
とりあえずティザーサイト的なものを作り、サンプル画像を置きました。

「N3ゴシック(仮称)」

http://n-yuji.info/index.php/totika-font3

なんでいまゴシック体を作った?

えーっとですね、フォントを使う側のデザイナーとして、既存のゴシック体にはずっと不満がありました。
そのうちいいのが出るのかなーと思いながら過ごしていたんですが、どうもいっこうに現れない。近年に出たアレもコレも自分が望んでいたものとは違ったのです。
それで、仕方がないから、自分にとっての「ゴシック体とはこうだよ!」をかたちにしてみたのが、今回のフォントです。王道というかストレートというかありそうでなかった普通のゴシック体なのです。既存ゴシック体のどこがどう不満でN3ゴシックはそれらとどう違うのか、という点については……

ゴシックはゴシックなんです!

全く先行様式を無視したゴシックはない。ゴシックのスタイルは本質的に過去の遺産の変奏と言ってよい。ただしその過去は実のところ一度もあったことのない架空の過去だ。
高原英理『ゴシックハート』

さて、唐突に引用なのですけれど、この文章、あたかも書体製作の話のように読める人もいるんじゃないでしょうか? これは、高原英理さんの『ゴシックハート』から引いた一節で、この「ゴシック」は書体のゴシック体のことでありません。ゴシック建築に始まり、ゴシックロマンスから現代の「ゴス」(ゴスロリのゴスです)に至る、美意識というか趣味の系譜のお話なのです。僕は、書体のゴシック体も「ゴス」につながるものと思っていて(というかわざとそのように誤読して)、その意識を反映させたわけです。が、すみません、この段はぜんぜん理解してもらえなくていいです……。
先日文庫版が出たので、いちおう貼っておきます……。

ゴシックハート (立東舎文庫)

ゴシックハート (立東舎文庫)

さておき

さて、細かいところにはまだ調整の余地があるものの、デザインのクオリティには自信があります。この自信というのは、「自分に対しては嘘偽りがない」という意味でして、自分が欲しかったフォントはコレなんですが、他人に受け入れられるかどうかはさっぱり判断がつきません(つまり自信はないということです)。ただ、客観的に見て(客観的に見て?)、そこいらの市販フォントに劣らないレベルには達しているとは思います。

現状と今後の予定

実際に使用することで見えてくるものもありますので、自分の仕事で使いつつ、デザインに微調整を入れています。
N3ゴシックは仮名書体なので、漢字その他を製作する予定はありません(漢字とか1人じゃ無理無理!)。現在、レギュラーとボールドの2ウエイトの仮名があります。この2ウエイトでは、組み合わせるフォントが限られますから、ウエイトの間を細かめに取り、各社のゴシック体の漢字と合わせて使えるようにファミリーを作成します(といいつつ使い方がまだよくわかっていない)。

販売について

販売についてはまだ未定です。もう少し先になります。
たぶんDLmarketさんあたりに委託することになると思います。前作のように自前の販売にこだわるわけではまったくないので、各種問い合わせもお待ちしております。

名前について

フォント名は仮です。コードネームです。本当は用意していた名前があったんです。それは、ひらがな4文字・鳥の名前で、先日発表された某フォントと若干イメージがかぶってしまいました。マネしたふうに思われるとアレなので、再考中です。いい名前が浮かぶといいんですけれども。

応援よろしくおねがいしまーす

最も効果的な支援は、僕に仕事を依頼することです。
N3ゴシックは、2ウエイトがすでにフォントとして使用できる状態になっていて、機会を見つけて使っていきます。書籍編集者の皆様におかれましては、(この書体を使うかどうかはさておき)ぜひとも装丁等をご依頼いただければ。