遠近法ノート

本好きのデザイナー、西岡裕二の日記帳なのです。デザインと読書について書くはず。

父に聞く その4

文字について

文字を描くのに参考にしたのは、先輩の描く文字と、新聞や雑誌の見出しでした。
レタリングの本とかなかったの?
なかったらしいです。いや、ないこともないだろうと思うんですが、田舎には届いてなかったのかもしれません。
商業看板を手がけるようになって、映画の看板とはだんだん字の形が違ってきたと父は言います。映画の看板では、字はまっすぐで固い感じだったのが、曲線を入れるように変わったと言うのです。これは、参考にしている文字(新聞や雑誌の見出し)が変わってきたということでもあるはずなのですが、詳しいことはちょっとわかりません。
たぶん、昔はポスターや雑誌の見出し文字は手書きだったのが、写植文字に置き換えられるようになり、その影響を受けたのではないかなと思います(直線的な書体、ゴナが普及するのはそれよりあとの話)。
ちなみに、父にちょっとした書体見本(「あ」の字しか載ってないもの)を見せたら、別に聞きもしないのに「明朝ではコレがええのう」と、ヒラギノ明朝を指さしました。うーむ、わかっていらっしゃる。

当時の練習帳を拡大したところ。枠だけ引いて、ささっと書いています。



ちょっと実演してもらいました。丸ゴシック、角ゴシック、明朝の書き分け。
看板文字は、書き順が通常と違うこともあります。たとえば「三」なら、上、下、真ん中の順で書くといった感じ。

書道を習い始める

看板の仕事を辞めてから、父は書道を習い始めました。
始めた理由はよくわかりません。
趣味を広げるとかそういう器用なまねができない父なのです。
書道は看板文字とはだいぶ違いますが、もう10年続けていて、今では師範にまでなったということです(師範というのがエラいのかどうかよくわからんですが)。たぶん、今日も飽きもせず文字を書いていることでしょう。
(おわり)

父に聞く その1 id:n-yuji:20050820
父に聞く その2 id:n-yuji:20050828
父に聞く その3 id:n-yuji:20050911
父に聞く その4